齊藤 想の【サイトーマガジン】2024.08

星新一賞に応募しよう! 工夫を楽しもう!
齊藤 想 2024.08.05
誰でも

【第202回のメュー】

◆公募分析・第11回星新一賞

◆小説でもどうぞ!に挑戦中(第33回)

◆おまけのもう1作

◆プラスのショートショート1~4

◆公募情報数点

【◆公募分析・第11回星新一賞】

第11回星新一賞の受賞作はこちらから読めます。

例年の受賞傾向は、一般部門は現代SF中心、ジュニア部門はショートショート中心になっていました。

しかし、前回(第11回)は、ジュニア部門の受賞傾向が一般部門に近づいています。個人的にはジュニア部門は大人にない突飛な発想を評価して欲しいので、残念に思います。

一般部門はいままでと比べて、雰囲気重視になっているのを感じます。

前回受賞作で、いかにも理系的発想といえるのは、木下充矢『彼方には輝く星々』ぐらいでしょうか。あとは雰囲気重視で、科学的な合理性やアイデアは以前よりは重視されていないようです。

第12回も同じ傾向が続くかどうか分かりませんが、受賞作を毎年読み続けていると、傾向がプレートテクニクスのようにゆっくりと移動しているように思います。

自分の予想としては、今回は前回(第11回)と同系統の作品が受賞すると予想します。

これは自分の勝手な予想なので、応募はあくまで自己責任でお願いします(笑)

【◆リアルタイム企画 小説でもどうぞ!に挑戦中(33回)】

今月のテーマは「不適切」でした。

『不適切課』 ※作品はタイトルをクリック

本作は設定勝負のコメディです。

アイデアとしては組み合わせ法で、いかにもふざけた感じの「不適切」という言葉に、真面目な職場の「課」を組わせました。

真逆のものを組み合わせるのは、有力なアイデア作成法です。

設定勝負のアイデアでクリアーすべき難点は、オチです。設定が突飛であるほど、設定の枠を超えるオチを目指す必要があります。

今回自分が用いたのは、叙述トリックの応用です。

主人公はいかにも真面目なサラリーマン風ですが、それが実は裸族だったというのが第1のオチです。

第2のオチは、主人公が裸族から抜けようとしたら、逆にメンバーからブーイングを受けてしまうことです。

第1のオチが弱いと感じたときは、第2のオチを用意するのも有力な手法ということで。

【◆プラスのショートショートその1】

第33回小説でもどうぞ!に応募した作品その2です。

『不適切な関係』 ※作品はタイトルをクリック

本作で活用したのは、間接的ではありますが、ダブルミーイングとミスディレクションの技法です。

「不適切な関係」というと不倫をイメージしますが、夫婦は「不適切な関係=加害者と被害者の関係」という文脈で話しています。

本作ではかなり強引ですが、ひとつの言葉に2つの意味をもたせるのが、ダブルミーイングです。

問題はオチです。

ダブルミーイングの意味を明かしたところで終わるのがショートショートとして奇麗な形式ですが、本作ではそれではうまく締まりません。

そのため、加害者が被害者となり、実は妻もサイコパス、つまりサイコパス夫婦だったという夢も希望もないオチにしてみました。このあたりの展開は、ミスディレクションを活用しています。

物語はハッピーエンドで締めるのがベースですが、多様なラストを考えることで、作品の幅を広げることができます。

作品の幅が広がれば、アイデアを作品という形にしやすくなりますので。

【プラスのショートショートその2】

第1回NIIKEI文学賞に応募した作品その2です。

『謙信汁』 ※作品はタイトルをクリック

本作はだじゃれネタです。

主催者が新潟経済新聞で、テーマが新潟なので、

新潟 → 上杉謙信 → けんしん → けんちん汁

という発想です。

自分的な作品のポイントはここです。

>最後に飾りというわけではないけど、うちは花かつおを掛ける。花かつおが湯気に揺られて踊るさまが、まるで川中島の決戦で火花を散らす武士みたいだろ。これぞ謙信汁の由来だ。

リアリティは細部に宿るといいます。

「謙信汁」の由来をもっともらしく書くことで、リアリティを出すことを目指しました。

もっとも受賞には届かなかったので、成功したかどうかは謎ですが。

【プラスのショートショートその3】

『スペースドライバー』 ※作品はタイトルをクリック

これは過去にブログで公開していた作品です。書いたのはプロパティからすると2002年2月のようです。

この作品は、「下らないことを壮大に書く」というショートショートでよく使われる技法をそのまま当てはめています。

ワープを何度もくり返して、届けるのは熱々のピザ。

いまならもっと別の書き方をしますが、自戒の念を込めて、当時のままでUPしています。

この作品を恥ずかしいと感じるということは、自分も少しは成長したと信じまして。

【プラスのショートショートその4】

『神の指紋』 ※作品はタイトルをクリック

本作は小説でもどうぞW選考委員会版用に書いて、応募しなかったボツ作品です。

このときのテーマは「神」でした。

マニアックな知識はショートショートや掌編のアイデアになります。知識は物語の種です。

本作で使った知識は動物の指紋です。コアラの指紋は人間とそっくりだそうです。そこからショートミステリを書いてみました。

ミステリなので、犯人とトリックのヒントは早い段階で出す必要があります。犯行の動機も必要です。さらに、主題も明示する必要があります。もちろん主人公と刑事のキャラも必要です。

それら全ての要素を冒頭に盛り込む工夫をしています。

いろいろな情報を冒頭の限られたスペースに詰め込むのは大変ですが、だからこそ工夫の面白さがあると思います。

工夫を楽しむことができれば、上達も早いのかなと思います。

【◆公募情報】

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