齊藤 想の【サイトーマガジン】2024.10

組み合わせ法・ダジャレネタは離れた言葉を組み合わせるのがコツ
齊藤 想 2024.10.05
誰でも

【第204回のメュー】

◆すばらしいショートショートの紹介 鹿石八千代『アナは名探偵』

◆小説でもどうぞ!に挑戦中(第35回)

◆プラスのショートショート1~3

◆公募情報数点

【◆すばらしいショートショートの紹介 鹿石八千代『アナは名探偵』】

冒頭、展開、オチまで三拍子そろった素晴らしい作品です。

https://koubo.jp/article/26896

本作は第30回「小説でもどうぞ」の最優秀作品です。

とにかく冒頭が絶品です

>その日も母親のエマはベッドの中で、愛娘のアナのお話を聞かせていました。

この1行で「登場人物」、「キャラの立ち位置」、「物語の舞台」といった大事な要素を全て説明しています。さらりと読んでしまいますが、実にうまいです。

「ベッドの中で」で舞台が寝室というだけでなく自宅ということも説明しています。さりげなく加えられた「その日も」も、たった4文字で母親が愛娘に毎日読み聞かせをしていること、つまり娘を溺愛していることを伝えています。

こうした間接的な描写が、メチャメチャ上手いです。

ここから「オオカミと少年」というよく知られた話へと続きますが、突如としてミステリに突き進むという意外性もあります。

童話から隠された真相を探るのは、文豪たちの作品の裏側を探る異色ミステリ、鯨統一郎『文豪たちの怪しい宴』に触発されたのかもしれません。

これだけも充分に面白いのに、さらにラストでどんでん返しが待っています。

ここまで3拍子揃ったショートショートはなかなか読めるものではありません。

ぜひとも鹿石八千代さんの作品を楽しんでください!

【◆リアルタイム企画 小説でもどうぞ!に挑戦中(35回)】

今月のテーマは「名人」でした。

負ける名人』※作品はタイトルをクリック!

本作のアイデアは組み合わせ法ですが、逆の言葉の繋ぎ合わせるのがポイントです。

「名人」というと「最強」「無敵」といったイメージがあるので、あえてこのイメージを逆転させる言葉を繋ぎ合わせています。

この逆のイメージを繋ぎ合わせる手法はかなり強力なので、ぜひとも活用してください。

むしろ「逆」を意識すると、繋ぎ合わるべき言葉が見えてきます。「夢」なら「ゴミ」。「希望」なら「地獄」とか、プラスにはマイナス、マイナスにはプラスの要領です。

ちなみに「負ける名人」には実在のモデルがいます。かなりのお爺ちゃんで、本人も「負ける名人」を自称していました。

となりで観戦したのですが、とにかく負け方が絶品です。自然な手を積み重ねて、自然に負ける。自分が上手側をもって負けてあげる立場になると分かりますが、本当に難しいことです。感嘆しました。

こうした小さな思い出を作品として昇華させるのも、創作の楽しみです。

【◆プラスのショートショートその1】

第35回小説でもどうぞ!に応募した作品その2です。

迷人戦』 ※作品はタイトルをクリック!

本作のアイデアはダジャレです。”名人”を”迷人”に変えています。

このダジャレネタのコツですが、できるだけ元の言葉から離れたほうが面白いです。

そこで「最強」「無敵」といったイメージの名人から、迷子の”迷人”という言葉を採用しました。このあたりは組み合わせ法と同じです。

「めい」には様々な漢字があります。

「命」「明」「姪」「冥」「銘」……ここから「離れた言葉を選ぶ」という基準を持っていると、自然と選択肢が限られます。

ダジャレならなんでもいいというわけではありません。「元の言葉からイメージが離れた言葉をかけあわせる」という原則を覚えておくと、有効だと思います。

【プラスのショートショートその2】

逃げ名人』 ※作品はタイトルをクリック

第33回小説でもどうぞに応募した作品その3です。

本作のアイデアとしては『負ける名人』と同じ手法を活用していますが、ストーリー展開は山本周五郎の短編を参考にしています。

奇妙な行動を取る主人公がいて、周りからバカにされる。ところが、最後に奇妙な行動の真の意味が明らかになる、というのが山本周五郎が愛用した形です。

山本周五郎は戦前から活躍している作家なので、現代では読む人が少ないと思います。

けど、いま読んでも面白いと思える短編を多く残しているので、創作のヒントに手に取るのも良いかと思います。

多種多様な読書は創作の肥やしになりますので。

【プラスのショートショートその3】

第9回小説でもどうぞW選考委員会版に応募した作品です。テーマは「友だち」でした。

キャプテン・スーサイド』(佳作受賞作) ※作品はタイトルをクリック

本作は映画『ペーパーマン』に登場するキャプテン・エクセレントを念頭に置いて書いています。性格と外見はキャプテン・エクセレントを借用しました。ただ、「本人に代わって自殺する」という設定はオリジナルです。

映画に登場するキャラを借用する場合ですが、基本的にはインパクトのある脇役から選ぶのが良いと思います。主人公は有名すぎるのと、キャラだけでなく映画のストーリーまで借用することになりがちだからです。

本作のキャプテン・エクセレントは映画『ペーパーマン』の脇役なのですが、結果的にラストが映画のストーリーに強く影響されたような気がします。

もうひとひねりを加える工夫が足りなかったと、反省です。

【プラスのショートショートその4】

旧聞紙』 ※作品はタイトルをクリック

愛媛新聞主催の超ショートショート2022用に書いてボツにした作品です。

超ショートショートはテーマが5つあり、本作では「新聞」を選んでいます。

このテーマですが、実はスポンサー関連で設定されています。なので愛媛新聞が主催の公募なのに、新聞をディスるショートショートを書いてどうするのだ、と判断してボツにしました。

でその後結果を見ると、中にはテーマを下げている作品も採用されていたりして、いやあ、ボツにする必要はなかったのかもしれません。

けど流石にこの作品で応募する勇気がありませんでした。

主催者には敬意を持たないと、とは思っているので。

【◆公募情報】

▼齊藤 想ブログ

https://takeaction.blog.so-net.ne.jp/

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