齊藤 想の【サイトーマガジン】2024.02

隠れた名作映画、選外佳作作品の紹介(タイトルを伏線に)、ダジャレ技法、エスカレーション技法
齊藤 想 2024.02.05
誰でも

【◆隠れた名作映画のご紹介『プリデスティネーション』】

 『プリデスティネーション』は2014年のオーストラリアのSF映画です。

 原作はAハイラインの短編小説『輪廻の蛇』で、 1958年7月11日の1日で書き上げたというエピソードが残っています。

 本作はタイムトラベル物なので、主人公が時間を激しく行き来します。時系列もこんがりがりそうになりますが、様々な工夫がなされることでスッキリさせています。

 ①登場人物を絞り込む。

 ②前半で青年(元少女)の語りをいれることで、概ねの時系列を理解させる。

 ③タイムスリップするときに西暦だけでなく人物を出すことで、数字ではなくストーリーとして時系列を理解させる。

 特に大事なのは①だと思います。本作の登場人物は非常に少なく、主要人物と言えるのは「主人公」「少女・青年」ぐらいで、「上司」「爆弾魔」がときおり登場するぐらいです。

 時代ごとに様々な登場人物を出したくなる欲望にかられますが、それをぐっと我慢するのが秀逸です。しかも様々な伏線が最後のワンシーンで綺麗に回収されるという構成も見事です。

 映画はマイナーですが、原作はSF界における有名作です。

 素晴らしい映画ですので、ぜひとも鑑賞してみてください!

【◆リアルタイム企画 小説でもどうぞ!に挑戦中(27回)】

今月のテーマは「病」でした。

『勇者たち』(選外佳作)

※作品は上記URLを参照

病気自慢コンテストという不謹慎な話です。

不謹慎なだけに、ジメジメとならないよう、できるだけ悪意を排除しています。

まず観客は全員病人です。出場者と観客を同じ立場にすることで、悪意を薄めました。

観客からのヤジには嫌味などなく、全員が江戸っ子的なキャラにしています。これも悪意を薄めるためです。

あとラストの1行ですが、これはショートショートでときおり使われるタイトルを伏線とする技法を採用しています。

タイトルの「勇者」とは誰のことなのか。死ぬ直前まで恋を忘れない老人か。

そのように思わせて、実は「勇者」には別の意味があり、それこそコンテストの真の目的だったという爽やかなどんでん返しを用意しています。

ひたすら驚きをもとめるオチ以外にも、このようなパターンもあるということで。

【◆プラスのショートショート・その1】

小説でもどうぞ!に応募した作品その2です。

『恋の病』

※作品は上記URLを参照

この作品は、自分がときたま書く「マユミと教授」シリーズです。

シリーズ物にするメリットは、

 ①キャラが確立しているので冒頭さえ間違えなければ書きやすい。

 ②パターンが決まっているので、基本アイデアさえあれば自然と完成する。

の2点だと思います。

この「マユミと教授」シリーズですが、登場人物はどSなマユミとどМ教授の2名です。

教授の変な研究にマユミが別の研究を披露し、最後はマユミが教授をイジメて終わる。

もうコテコテですが、コテコテだからこそ、書きやすいという部分もあります。

公募に向くかと言われると、あまり向きませんが、楽しんで書くにはシリーズ物はとても良いです。

たまにはシリーズ物にもチャレンジしてみてください。

【◆プラスのショートショート・その2】

2022年超ショートショートに応募した作品です。テーマは「ライオン」を選択しています。

『彫刻家』

※作品は上記URLを参照

これは典型的なエスカレーションの技法を使っています。最初は小さな出来事だったのが、積み重ねていくうちに際限なく大きくなるのがパターンです。

普通は巨大な何かがでてきてオチなのですが、そこを少しひねって、別系統のオチを組み合わせてみました。

エスカレーションの技法とはこういうものなんだなあと、思っていただけたらと。

【◆プラスのショートショート・その3】

ちくま800字文庫に応募した作品です。

『向上地帯』

※作品は上記URLを参照

本作はショートショートの王道中の王道、ダジャレネタです。

とにかくダジャレは突飛な設定を作りやすいです。自然な組み合わせ法といいますか。

創元SF短編賞で大賞を受賞した『天翔ける法勝寺』という作品があります。仏教の力でロケットを飛ばす、この力の秘密が仏理学なのですが、こんな突拍子もないアイデアが生まれるのがダジャレの良いところだと思います。

アイデアに困った人には、ぜひともダジャレのパワーを感じていただければと。

【ショートショート・その4】

Yomebaに応募した作品ですね。たしかテーマは「家電」でした。

『家伝の家電』

※作品は上記URLを参照

これもその3と同じく、ショートショートの王道中の王道、ダジャレネタです。

家電というのは古くなれば買いなおすものなのに「家伝である」という理由で大切にしなくてはならない。

そういった逆転のシチュエーションの面白さを狙いましたが、見事に失敗しました。

たぶんですが、「秘伝のタレ」とのリンクのさせ方が悪かったと思います。「秘伝のタレ」との類似性を持たせるのなら、他店にはまねできない独特の味わいとか、もっとアイデアを出すべきでした。

こういう失敗を積み重ねて、経験値が増すということで。

【◆公募情報】

・第19回千代田文学賞(短編・4/19〆)

・第28回高橋書店手帳大賞(短文・4/30〆)

・第16回年賀状思い出大賞(作文・4/30〆) 

・第9回今は亡きあの人に伝えたい言葉(手紙・3/31)

・うなぎパイにまつわる人生エピソード大募集(短文・3/31〆)

・第5回「海上保安の日」俳句コンテスト(俳句・2/20〆)

・第2回「夫が社長」妻のつぶやき川柳(川柳・2/29〆)

・高血圧に関する川柳・標語コンテスト2024(川柳標語・2/29〆)

・2024情報通信の安心安全な利用のための標語(標語・2/29〆)

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